Kadeau
Kadeauさんは、ボーンホルム島の料理をバックボーンとするモダンデンマーク料理レストランで、nomaと並ぶコペンハーゲン最高峰のレストランの一つです。2019年の北欧諸国版ミシュランでは、noma、a,o,cと並ぶ2つ星を獲得しています。
ボーンホルム島は、コペンハーゲンの東に位置するデンマークの離島です。チーズなどの乳製品が有名な島ですが、元々は野生動物の肉を使った料理も多く、Kadeauの料理はそうした伝統文化へのリスペクトの上に成り立っています。
店舗情報
- 住所:Wildersgade 10b, 1408 København K
- 営業時間(ランチ):土の12時~16時
- 営業時間(ディナー):火~日の18時半~24時(日は19時~)
- https://www.kadeau.dk/kadeau/
Kadeauはシックで落ち着いた感じの雰囲気ですが、Kadeauのスタッフは非常にフレンドリーで、楽しい時間を過ごすことができます。高級店ということもあり、スーツの方が多いように感じましたが、セーターのような普通の格好の方もいました。
Kadeauのメニューはnoma同様にコース料理のみです。飲み物は23ページにわたるKadeauおすすめのワインリストがありますが、ワインペアリングやジュースペアリングもあります。今回もnomaの時と同様ジュースペアリングを注文しました。
最初の料理は、コールラビとカシスの料理と、芽キャベツに小さな貝とヘーゼルナッツを合わせた料理です。
コールラビのアミューズは、ルビーのように赤く輝くカシスのソースが、葉っぱの緑と美しいコントラストで、Kadeauらしい自然を感じさせる美しい仕上がりの料理です。カシスのソースの甘みとコールラビの素朴な味わいがいいバランスでした。
芽キャベツは、グリルされて少し塩の効いたところに、シャコガイのような小さな貝とヘーゼルナッツの食感が合わさり、面白い料理になっています。ボーンホルムという島の文化でしょうか、Kadeauの序盤は貝を使った料理が多く、同じ冬でも森をテーマにしていたnomaの料理とはだいぶ趣が異なります。
次の料理は、アイスランドガイと呼ばれる、小さな貝が主役の一品です。エルダーフラワーなどのピクルスと、グーズベリーのジュースが添えられ、これまたKadeauらしい自然の美しさを感じる料理です。アイスランドガイは初めて食べましたが、グーズベリーと合わせるとグーズベリーが勝つくらいの繊細なお味です。
お次の料理は、塩漬けにしたブリルに、ストロベリーやパセリの種をまぶした美しい一品です。nomaの料理の派手な美しさと異なり、Kadeauの料理はシンプルな美しさがあるように感じます。お味の方は少し塩が強めです。
ここから3品の料理のお供は、Kadeau特製のルバーブとカモミールのジュースです。nomaや108での経験から、ジュースペアリングのジュースは比較的攻めたものが多い印象でしたが、こちらはすっきりと美味しく、気が付くと追加をもらっていました。
お次の料理はイカとケール、そしてマッシュルームのブイヨンです。
イカは炭火で調理されており、こう言ってはなんですがイカ焼きです。しかし非常に甘くて柔らかく、おいしかったです。マッシュルームのブイヨンは牛骨からの出汁も少し入っており、体の温まる料理でした。
お次はリム海峡のカキに、ジャガイモのソースとクランチ、カシスの葉っぱを合わせた料理です。これもややカキが小さめで、ジャガイモが勝ってしまう部分もありますが、おいしいです。カシスの葉はどこか桜餅の葉っぱの様で、先ほどの料理と合わせ、Kadeauからは少し日本のフレイバーを感じます。
次の料理はスモークサーモンとトマトのジュースの組み合わせです。スモークサーモンは、Kadeauのスタッフが大きな身からすくい出してくれるところを、目の前で見れます。このサーモンは塩もちょうどよく、甘みのあるトマトのスープとの相性も抜群でおいしいです。
お次の2品の料理には、Kadeauの自家製ではなく、オーストリアのワインセラーが作っているノンアルコールワインを合わせます。すっきりとした甘さのスパークリングで料理にも合い、かなり美味しかったです。nomaはキャビアのタイミングも含めすべて自家製でしたので、このあたりにもKadeauとnomaの考え方の違いが出ています。
お次の料理はキャビアです。たっぷりのキャビアに、キャベツのキャラメリゼとクルミが合わせてあります。nomaでキャビアを頂いた時も驚きましたが、Kadeauの食材の組み合わせもまた新しく、とても美味しいです。もともとキャビアはそんなに好きではなかったのですが、nomaやKadeauのおかげ(のせい)で、好きになりつつあります。
お次は一風変わった、大麦のパンケーキにハビギスチーズを合わせた料理です。ボーンホルム島の伝統料理やチーズを使った、Kadeauらしい料理といえます。上の葉っぱは海苔のような風味でした。
ここからは全てKadeauの自家製ジュースに戻ります。ここからの3品の料理に対してはリンゴとアンズタケのジュースで、今回Kadeauで頂いたジュースの中で、一番クセがありました。
次の料理はボーンホルム島のネクセという都市のニシンを使った握りです。握りと言っていますが、実際に下にあるのはコメではなくライブレッドです。また少し日本のフレイバーも感じさせつつ、ボーンホルム島のKadeauらしい料理です。
まだまだシーフード料理が続きます。お次はホタテにホースラディッシュソース、ヘンプ(食用の麻)を合わせた料理です。ホタテは大きくてフニフニとしたスライスが数枚入っており、食べ応えがありあります。
シーフード料理のラストは、ロブスターのタルトです。今回Kadeauで頂いた様々な料理の中で、個人的にはこちらがナンバーワンでした。サクサクとしたタルトにロブスター、ドライトマトが乗っていますが、ロブスターの旨味とトマトの甘みが絶妙で、かつパイ生地もサポートも完璧でした。
Kadeauがお肉料理に合わせて出してきたのが、チェリーとカシスに、胡椒のフレイバーを合わせたジュースです。しかしこちらはそこまで胡椒が強くなく、旨味の強い肉に良く合うジュースとなっていました。
ここからの2品がお肉料理です。一品目は、Kadeauこだわりの野生の鴨をフランバドゥーで焼き上げた一品です。
フランスに渡ったところを捉えられたデンマークの鴨という、非常に珍しい素材を使った料理です。Kadeauのスタッフの方も、もし他で同じような鴨を見かけたら、自家製のスナップスをサービスするよと冗談で言っていました。火の入れ方はもちろん完璧で、お肉の旨味ががギュッと凝縮されており、とても美味しかったです。Kadeauは貝などのシーフードが強い印象を受けましたが、お肉料理もとてもレベルが高いです。
ラストはラムです。熟成されたラムを使うことで、これまたお肉の旨味がかなり強い一方、ラムの独特の風味がフレーバー程度に残っています。こちらも調理は完璧で、お肉はすごく柔らかく、かみしめるたびに旨味が広がってとても美味しかったです。
noma同様、お肉料理に期待して冬に来店しましたが、Kadeauのお肉は素晴らしく、十分に満足のいくものでした。
デザートには洋ナシとコンブチャのジュースが出されました。noma系列の108で頂いたコンブチャのジュースはかなりクセがあったので、今回も少し警戒しましたが、Kadeauのジュースは驚くほどなめらかで、とても美味しかったです。
ここからはデザートです。Kadeauのデザートの一品目は、フレッシュなクリームとラズベリーにグーズベリーのジュース、そしてKadeau自家製のスナップを振りかけた料理です。
乳製品に強いボーンホルムのKadeauらしく、フレッシュなクリームはコクがあっておいしく、ラズベリーやグーズベリーのジュースとの相性も抜群でよかったです。
お次も乳製品で、ボーンホルムのアイスクリームに、松の実のカラメルとはちみつを合わせています。松の実はKadeauだけでなくnomaでも見かけており、ニューノルディック料理の定番であることが伺えます。
Kadeauのコースの最後はさっぱりとしたクインスとアンジェリカです。たくさんの料理を頂いた後にぴったりという感じのいい締めでした。
最後にコーヒーを頂くと、お茶菓子が出てきました。レモンタルト風のアップルタルト、カルダモンのパウンドケーキ、Kadeau自家製のキャラメルと、Kadeauの趣向を凝らした料理で美味しかったのですが、このコーヒーが予想外に別料金でした。
文句を言うつもりもないですが、2,300krもするコースですしnomaでもコーヒーや紅茶はインクルードだったので、少しびっくりです。
以上、Kadeauさんでした。
nomaのような華美なプレゼンテーションや、エンターテインメント性はないものの、料理のお味に関していえばnoma以上だと思います。またボーンホルム料理という点でもKadeauでしか味わえない料理がありますので、そういった点に価値を感じる方は、是非Kadeauを訪れてみていただきたいと思います。